エステ市場が6年連続で縮んだ本当の理由——自費クリニックが今のうちに見直したい3つのポイント
矢野経済研究所が2026年5月に公表した最新調査で、国内エステティックサロン市場は6年連続の縮小となりました。回復の兆しとして期待されるのが『都度払い』の導入です。エステ倒産が続き不信感を持つ患者さんの警戒心は、必ず医療脱毛を提供する美容クリニックにも広がっていきます。今回は、自費クリニックが今のうちに見直しておきたい3つのポイントを整理します。

メディカルサインの中村です。
矢野経済研究所が2026年5月に公表した最新調査によると、2025年度の国内エステティックサロン市場は事業者売上高ベースで2797億円となる見込みで、前年度比92.1%。これで6年連続の縮小です。2026年度はわずかに持ち直す予測ですが、回復の押し上げ材料として名指しされたのは、新しい施術技術ではなく『都度払いへの移行』と『料金の分かりやすい表示』でした。
ヒフコNEWSが伝えた通り、背景には脱毛サロンの大量店舗閉鎖と前払い後の返金トラブルがあります。消費者は『一括前払いコース』に対して、明確な拒否反応を持ち始めました。
「うちは医療だから関係ない」と感じられた院長先生もいらっしゃるかもしれません。ただ、患者さんはエステとクリニックを明確には分けません。エステ倒産が続き不信感を持つ患者さんの警戒心は、必ず医療脱毛を提供する美容クリニックにも広がっていきます。今回は、自費クリニックが今のうちに見直しておきたい3つのポイントをお伝えします。
1:価格表示は『総額が3秒で分かる』ところまで踏み込んでいますか
1つ目は、Webサイトの価格表示です。
矢野経済研究所が指摘したのは、サロン側が『料金をサイトに分かりやすく掲示する動きが広がっている』点でした。逆に言えば、これまでのエステ業界の料金表示は『分かりにくかった』と業界自身が認めたとも読めます。
自費クリニックのWebサイトを拝見すると、似た構造が残っている院が少なくありません。1回あたりの金額は書かれていても、推奨される回数・コース総額・麻酔代・薬代・再診料が別ページに分散していて、患者さんが受診前に総額を把握できない。カウンセリング当日に初めて『総額50万円』を聞かされる流れは、エステの前払いトラブルと心理的に同じ場所を踏みます。
患者さんが知りたいのは、施術1回の単価ではなく『自分のケースで、最終的にいくらかかるのか』です。1ページ内に、想定回数・総額の幅・追加で発生し得る費用までを並べておけるかどうか。ここの透明性が、来院前の信頼の8割を決めます。
医療広告ガイドラインの範囲内で、誇大表現を避けながら『総額が3秒で分かる』ところまで踏み込むこと。これは広告対策ではなく、警戒心の高い時代の患者さんに来院していただくための前提条件になりつつあると感じます。
2:契約プランに『途中でやめられる選択肢』が用意されていますか
2つ目は、契約プランそのものです。
エステ業界で『都度払い』が支持されているのは、価格の問題ではありません。利用者は『一括前払いより割高でも、都度払いを選ぶ』と矢野経済研究所は分析しています。理由は『店舗閉鎖後の返金トラブルを避けやすい』からです。つまり、消費者は『安さ』より『リスクヘッジ』を選びはじめました。
自費クリニックでも、注入治療や医療脱毛、ボディコンタリングなど、複数回の施術を要する治療では、コース契約プランが一般的です。コース契約は院側にとってキャッシュフローの安定と途中離脱の防止という大きなメリットがあります。それ自体は否定されるものではありません。
ただ、今の患者さんは『途中でやめられる契約』をデフォルトの選択肢として求め始めています。コース契約に加えて『1回ずつ受診し、効果を見て継続を判断できる料金プラン』を併設しているかどうか。これは見直しの余地が大きい部分です。
院長先生にとって不安なのは、都度払いを併設すると客単価が下がるのではないか、という点だと思います。現場で見ていると、これはおおむね杞憂です。最初の1〜2回を都度払いで様子を見ていただいた患者さんが、自分の意思でコース契約に切り替えるケースは、想像より多く起こります。途中でやめられる選択肢を示したことで、入り口の警戒心が下がる構造です。
3:初回カウンセリングは『売る場』ではなく『判定材料を渡す場』になっていますか
3つ目は、初回カウンセリングの設計です。
エステの前払いトラブルに巻き込まれた方の多くは、その場で『今日コース契約すれば〇〇円引き』と迫られて意思決定をした層でした。同じ流れを、自費クリニックのカウンセリングルームで再現していないかは、一度見直しておきたいところです。
カウンセリング後の即日成約率が高い院は、見方によっては優秀です。ただ、当日決めなかった患者さんが、後日落ち着いて『他院と比べて、ここがよかった』と戻ってくる比率も、同じくらい大事な指標です。これが極端に低い場合、初回カウンセリングが『判定材料を渡す場』ではなく『その場で売り切る場』として設計されている可能性があります。
仕組みとしては、カウンセリング後に治療計画書・概算見積り・代替案を持ち帰っていただける状態を作ることです。当日決めなくても良いと明示されたうえで戻ってきた患者さんは、契約後の解約率・クレーム率がはっきり低い傾向があります。これは、医療現場歴10年の伴走者として複数の貴院に入らせていただく中で、繰り返し確認できている感覚です。
2025年8月の厚労省通知で、カウンセラーが治療法を提案する運用は医師法第17条違反として整理されました(こちらのコラムで詳述しています)。即日契約のプレッシャーをカウンセラーが担う運用は、コンプライアンス面でも見直しを迫られています。エステの信頼揺らぎ、改正医療法、カウンセラー業務範囲の整理。3つの流れが同じ方向を指している、と感じます。
結論——『安さ』ではなく『信頼』を売る時代へ
エステ市場の縮小は、市場全体の話というより、消費者の警戒心が新しい局面に入ったことを示しています。患者さんは『安さ』ではなく『途中でやめられる安心感』にお金を払い始めました。
自費クリニックは、医療広告ガイドラインの範囲内で、価格・契約・カウンセリングという3つのポイントに少しずつ手を入れることで、この変化に先回りできます。短期的な客単価は揺れるかもしれません。ただ、長期で見ると、警戒心の高い患者さんから選ばれる院だけが残る業界構造に変わりつつあると感じます。
「うちのコース契約、いまの空気感とずれていないだろうか」「価格ページが分かりにくいかもしれない」と感じられた院長先生は、ぜひ一度ご相談ください。
メディカルサインは、美容医療現場歴10年と医療広告ガイドラインの実務知識をもとに、貴院の価格表示・契約プラン・初回カウンセリング導線までを横断で点検し、業務の作り直しを伴走支援しています。お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
出典: 矢野経済研究所「エステティックサロン市場に関する調査(2026年)」(2026年5月公表)、ヒフコNEWS「エステサロン市場、2026年度は7期ぶりのプラス予測か 2025年度は6年連続減少 都度払い導入に信頼回復の兆しも 矢野経済研究所が報告」(2026年5月16日、https://biyouhifuko.com/news/japan/17840/ )、厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年8月15日医政発第815021号)

中村崇雄メディカルサイン代表
20代をWeb業界で、30代を美容クリニックの広報・マーケティング担当として過ごす。2023年にメディカルサインを創業し、「Webと、AIに詳しい人が、院内に一人いる」状態を月額で実現するパートナーとして、医療現場のとなりで伴走している。
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