美容クリニックで『カウンセラー任せ』が違法ラインに——厚労省通知と改正医療法が問う3つの線引き
2025年12月の医療法改正成立と、厚労省が示した「美容医療の違法ライン」。これまで多くの美容クリニックで行われてきた『カウンセラーが治療内容を患者に提案し、医師が施術を行う』運用は、医師法第17条違反として明確に整理されました。今回は、貴院が今すぐ見直しておきたい3つの線引きをお伝えします。

メディカルサインの中村です。
「カウンセラーが患者さんと話して、施術内容を決める。医師は最終確認だけ」。美容クリニックで、よくある流れです。
ところが2024年の厚労省検討会報告を起点に、2025年8月の通知、2025年12月の改正医療法成立と、この「現場の当たり前」が立て続けに違法ラインへと整理されました。2026年は、保健所の立入検査や行政指導が現実味を帯びる年になります。
今回は、貴院で今すぐ見直しておきたい3つの線引きを、現場をよく知るメディカルサインの目線で整理してお伝えします。
何が起きているのか——3つの動きが同時に進んでいます
最初に、ここ1年で進んだ動きを短くまとめます。
1つ目は、2024年11月の厚労省「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書です。患者さんがカウンセラーのみと相談して治療内容を決め、医師がそれを実施している事例が、違法の疑い事例として挙げられました。
2つ目は、2025年8月15日付の厚労省通知です。違法判断の基準と、保健所がどのような場合に立入検査できるのかが整理されました。
3つ目は、2025年12月5日に成立した改正医療法です。美容を目的とした医療を行う病院・診療所の管理者は、安全管理体制や事故防止策を都道府県知事に報告する義務を負うことになりました。施行は公布後2年以内です。
つまり、これまでグレーゾーンで済んでいた領域に、3つの方向から境界線が引かれた状態です。
1:カウンセラーが「治療法の提案」をしていませんか
1つ目は、カウンセリングの中身です。
厚労省通知は、無資格者が「カウンセラー」と称して治療法を提案したり、施術の希望を聞き取って個別に対応する行為は、実質的に「診断」に該当し、医師法第17条(医師でない者の医業の禁止)に違反するおそれがあると示しました。
ここで重要なのは、「最後にハンコを押すのが医師ならOK」ではない、という点です。治療法の提案や、薬剤・術式の選定そのものが診断行為に含まれる、という解釈に踏み込んでいます。
貴院のカウンセリングルームで、こんな会話が日常的に起きていないでしょうか。
- 「先生にも確認しますが、◯◯さんには△△の方が合うと思います」
- 「予算を考えると、AプランよりBプランが現実的です」
- 「効果を出すなら、まずヒアルロン酸からがおすすめです」
これらは、カウンセラーの立場では超えてはいけない線です。線引きの基本は、「治療法の選定・提案は医師が行い、カウンセラーは医師の指示の範囲内で説明や予算調整に留まる」運用にすることです。
2:メール・チャットだけの「診察」になっていませんか
2つ目は、オンラインの初診運用です。
医師がメールやチャットだけで診断や処方を行う行為は、医師法第20条(無診察治療等の禁止)に違反するおそれがある、と通知で示されました。診察は、リアルタイムの視覚・聴覚情報を含む必要があると整理されています。
LINEで写真を送ってもらい、医師がテキストで返信して薬を出す。オンライン診療プラットフォーム経由だが実態は画像と文章のやり取りだけ。こうした運用も見直し必要があります。
「対面 or リアルタイムビデオ通話」を診察の前提に置き、テキストやLINEはあくまで予約・問い合わせの導線として切り分けるようにしましょう。
3:無資格スタッフが「施術」に関わっていませんか
3つ目は、施術現場の人員配置です。
医療脱毛、HIFU、アートメイク。これらを無資格者が反復継続的に行うことは医業に該当し、違法であると通知で改めて整理されました。
スタッフの中に「これまで現場で覚えてきたから」「人手不足だから一部任せている」という方はいないでしょうか。改正医療法では、管理者である院長先生に、安全管理体制の報告義務が課されます。施行はこれからですが、現場の体制づくりは今から始めるのが現実的です。
「立入検査」への備えを
これまで、現場の違法事例に対して保健所がどこまで踏み込めるかは曖昧でした。今回の通知と改正医療法は、その曖昧さに線を引き、行政が動ける状態を整える内容です。警察庁・消費者庁との連携にも触れられています。
「他の貴院もやっているから大丈夫」という美容業界の空気は、ここから先は通用しないと考えたほうが良いと感じます。
それでも院内だけで整理しきれないときは、ご相談ください
カウンセリングの台本、オンライン初診の運用フロー、スタッフの業務範囲表。すべてを院長先生お一人で見直すのは、診療の合間ではどうにも時間が足りないテーマです。
メディカルサインは、美容医療現場歴10年と医療広告ガイドラインの実務知識をもとに、貴院の運用・Web表記・LINE対応までを横断で点検し、業務の作り直しを伴走支援しています。
「うちの運用、今のままで大丈夫だろうか」と感じられた院長先生は、ぜひ一度ご相談ください。
出典: 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年8月15日医政発第815021号)、厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会 報告書」(令和6年11月)、医療法等の一部を改正する法律(令和7年12月成立)

中村崇雄メディカルサイン代表
20代をWeb業界で、30代を美容クリニックの広報・マーケティング担当として過ごす。2023年にメディカルサインを創業し、「Webと、AIに詳しい人が、院内に一人いる」状態を月額で実現するパートナーとして、医療現場のとなりで伴走している。
プロフィールを見る →