美容医療業界において、SNSはクリニックの認知度向上や集客、さらにはブランディングにおいて不可欠なツールとなっています。その第一歩とも言えるSNSアカウント名を、「クリニック名」にするか、それとも「ドクター名(医師個人名)」にするか、悩まれる担当者の方も多いのではないでしょうか。アカウント名はユーザーが最初に目にする情報であり、クリニックの印象やその後の行動にも影響を与える重要な要素です。
それぞれの選択肢が持つ特徴や成功事例、メリット・デメリットを整理し、クリニックの目的や状況に合わせて最適な戦略を選ぶようにしましょう。
【この記事の目次】
1.クリニック名義アカウントの特徴と事例
クリニック名義のアカウントは、医療法人としての信頼性や安定感を演出し、クリニック全体のブランドイメージを構築するのに適しています。複数の医師が在籍し、幅広い施術メニューを提供している場合に特に有効です。

戦略と傾向:
- クリニックの理念、診療のポリシー、最新の美容医療機器などを発信し、総合的な魅力を訴求
- 所属医師やスタッフの紹介、院内の雰囲気などを伝え、安心感を提供
- キャンペーン情報や休診日など、クリニックからの公式情報をアナウンス
- 統一されたデザインやトーンで、ブランドイメージを醸成
成功事例紹介(概要とポイント):
湘南美容クリニックグループ: グループ全体および各院のアカウントで、圧倒的な情報量と多様なコンテンツ(施術解説、症例写真、ドクター紹介、タレントとのタイアップ企画など)を発信。幅広い層にリーチし、ブランド認知度を確立しています。
品川スキンクリニック: インフルエンサーとの連携を通じて施術の様子を公開し、透明性を高めることで、潜在顧客の不安を軽減し、信頼を獲得しています。
メンズリゼ: 人気お笑いコンビ「かまいたち」さんを起用し、ターゲット層である男性の共感を呼ぶストーリー性のあるコンテンツを展開。CMとの連動で効果を最大化しています。
メリット:
- ブランドの継続性: 医師の退職や独立にアカウントが左右されにくく、長期的な資産としてブランドを蓄積できます。これにより、安定したプロモーション効果が期待できます。
- 信頼感と安心感: 医療法人として情報発信することで、ユーザーに「組織としてのしっかりとした医療機関」という印象を与え、信頼に繋がります。
- チームでの運用: スタッフが協力して運用しやすく、デザイナーやライターらで役割分担をすることで、コンテンツの量や質を担保しやすいです。
- 総合的な訴求: 複数の医師や多様な施術メニュー、クリニックの設備や理念などを幅広く紹介でき、多様なニーズを持つ潜在顧客にアプローチできます。
デメリット:
- 属人性の希薄化: 個々の医師の個性や専門性が前面に出にくく、他のクリニックとの差別化が難しい場合があります。
- 事務的な印象: キャンペーンなどの宣伝投稿が多くなりやすく、ユーザーとの心理的な距離が縮まりにくい欠点があります。
2.医師個人名義アカウントの特徴と事例
医師個人名義のアカウントは、その医師の専門性、技術力、そして人柄をダイレクトに伝え、医師個人への信頼とファンを構築する戦略です。「この先生にお願いしたい」という指名での集客を目指す場合に特に有効です。フォロワー数も伸びやすく、話題にもなりやすいため、成功も炎上も多いのが医師アカウントです。

戦略と傾向:
- 医師の得意な施術や専門分野に関する質の高い情報を発信
- 豊富な症例写真や動画、詳しい施術解説を通じて技術力をアピール
- カウンセリングの様子や医師の日常、考え方などを垣間見せることで親近感を醸成
- コメントやDMを通じてユーザーと直接コミュニケーションをとり、信頼関係を深化
成功事例紹介(概要とポイント):
TikTok活用医師の例(ドラゴン細井医師、りぃ先生など): 美容医療の裏側や芸能人の顔立ち分析といったエンタメ性の高い企画、ビフォーアフターの分かりやすい提示、カウンセリング風景の公開など、専門性と個性を両立させたコンテンツで多くのフォロワーを獲得。若年層を中心に高い集客力を発揮しています。
Instagram活用医師の例(長尾沙也加医師、上原恵理医師など): 特定の施術(例:クマ取り、糸リフトなど)における圧倒的な症例数と美しい仕上がりを提示。施術に関する丁寧な解説や、患者からの質問への誠実な回答を通じて、専門家としての信頼を確立。医師個人の美意識やライフスタイルへの共感がファン化を促進しています。
メリット:
- 医師への強い信頼とロイヤリティ: 医師個人の技術や人柄に魅力を感じたユーザーは、強い信頼を寄せ、指名での来院に繋がりやすいです。これは高い成約率とリピート率に貢献します。
- 専門性の明確化: 「〇〇治療ならこの先生」というように、特定の分野における医師の権威性を確立しやすくなります。
- ファン化による口コミ効果: 医師のファンとなったユーザーは、自発的に情報を拡散してくれる可能性があり、自然な形での集客効果が期待できます。
- 親近感と共感: 医師の人間味あふれる発信は、ユーザーに安心感と親近感を与え、相談へのハードルを下げます。
デメリット:
- 医師の属人性リスク: その医師が退職・独立した場合、患者も新しいクリニックへと流れていきます。クリニックのファンではなく、医師のファンでしかない点は十分留意しましょう。集客もその医師に依存する形になりがちです。
- 医師個人の負担: 質の高いコンテンツを継続的に発信するための時間的・精神的負担が医師個人に集中しがちです。また、医師のSNSスキルにより成果は大きく変わります。
- クリニックブランドとの調和: 医師個人のキャラクターが強すぎると、クリニック全体のブランドイメージ合わず、オーナーと医師で対立してしまうケースも非常に多いです。
- 炎上リスクの集中: 2024年に献体前ピース写真で女性医師が大炎上したのは記憶に新しい所だと思います。このような炎上は医師アカウントでこれまでも度々起きています。
3. クリニックと医師双方の強みを活かす「ハイブリッド戦略」

クリニックアカウントも医師アカウントもそれぞれメリットデメリットがあります。そこで、クリニックアカウントと、医師アカウントを併用し、互いに連携させる「ハイブリッド戦略」がオススメです。
概要と事例:
湘南美容クリニックグループでは、グループや各院の公式アカウントに加えて、多くの医師が積極的に個人のSNSアカウントで情報発信を行っています。クリニック公式は幅広い情報提供とブランドイメージ構築を担い、医師個人アカウントはそれぞれの専門性や個性を活かしてファンとの関係を深める役割分担がなされています。
メリット:
- 多角的な魅力発信: クリニックとしての信頼性と、医師個人の専門性や親近感を両面からアピールでき、より幅広い層の潜在顧客にリーチできます。
- 集客機会の最大化: 「信頼できるクリニックを探している層」と「特定の医師を探している層」の双方にアプローチ可能です。
- ブランドシナジー: 医師個人の知名度向上やファン獲得が、クリニック全体のブランド価値向上にも貢献します。
デメリット:
- 負担が大きい: 複数アカウントの運営は負担が大きくなります。炎上予防のためのチェック体制を含め、どうSNSを運営していくか制度設計をするようにしましょう。
運用ポイント:
- 各アカウントの役割分担と連携方法(例:公式アカウントから医師アカウントへの誘導、共通ハッシュタグの使用など)を明確にする。
- クリニック全体としてのブランドイメージと、医師個人の発信する情報に一貫性を持たせる。
- 医師個人アカウントの運用ルールや、医療広告ガイドライン遵守のためのチェック体制を整備する。
4. 最適なアカウント戦略を選ぶための判断基準
どの戦略が自院にとって最適かを見極めるためには、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。
- クリニックの規模・体制: 個人経営のクリニックか、複数の医師が在籍する中規模クリニックか、全国展開する大手グループか。SNS運用に専任のスタッフを配置できるかなど、リソースの状況も重要です。
- 所属医師の特徴と意向: SNSでの情報発信に積極的で、得意とする医師がいるか。医師自身が「顔」となることに協力的か。
- メインターゲット層: どのような悩みやニーズを持つ、どの年齢層に情報を届けたいか。そのターゲット層が主に利用するSNSプラットフォームは何か。
- ブランディング戦略: クリニック全体のブランド力を高めたいのか、特定の「スター医師」を育成し、その集客力に期待するのか。
- 提供する美容医療の専門性: 幅広い美容医療に対応するのか、それとも特定の施術や分野に特化しているのか。
- リソース配分: 継続的なコンテンツ作成、コメントやDMへの対応、効果測定などに、どれだけの人員と時間を割けるか。

これらの要素を慎重に検討し、「どの戦略が最も効率的に集客効果を高められるか」という視点で選択することが肝要です。
5. 医療広告ガイドラインとSNS運用の注意点
どのようなアカウント戦略を取るにしても、美容クリニックのSNS運用においては、厚生労働省の定める「医療広告ガイドライン」を守るようにしましょう。安易な情報発信は、患者に誤解を与えるだけでなく、行政指導や罰則の対象となり、クリニックの信頼を著しく損なう可能性があります。
特に注意すべきポイント:
- ビフォーアフター写真の掲載: 施術内容、標準的な費用、主なリスク・副作用などを明記し、不適切な加工・修正は行わない。
- 誇大広告・比較優良広告の禁止: 「No.1」「日本一」「最新最高の治療法」といった科学的根拠に乏しい表現や、他院との比較で自院の優位性を示す表現は原則禁止です。
- 患者の体験談: 個人の感想に過ぎない体験談の掲載は、原則として認められていません。
- ステルスマーケティングの禁止: インフルエンサーにPRを依頼する場合は、必ず「#PR」「〇〇クリニック提供」といった広告であることを明示する必要があります。

常に最新のガイドライン情報を確認し、倫理観を持って誠実な情報発信を心がけましょう。
6. まとめ:自院に合ったSNS戦略で、未来の患者と繋がろう
- 美容クリニックのSNSアカウント名戦略において、「クリニック名義」と「医師個人名義」に絶対的な優劣はありません。
- それぞれにメリット・デメリットがあり、クリニックの規模、方針、所属医師の特性、そして「集客効果を高める」という目的に応じて最適な戦略は異なります。
- 本コラムで挙げた判断基準を参考に、自院の状況を多角的に分析し、最も効果的なアプローチを戦略的に選択することが重要です。
- どのような戦略を選ぶにしても、医療広告ガイドラインを遵守し、患者さんに対して誠実で正確な情報を提供し続ける姿勢が、長期的な信頼とクリニックの成長に繋がります。
本コラムでは、美容クリニックがSNSアカウント名戦略を検討する上で重要な「クリニック名義」「医師個人名義」それぞれの特徴、メリット・デメリット、そして「ハイブリッド戦略」について解説しました。
自院の現在の状況と将来のイメージを照らし合わせ、最も効果的なアプローチを戦略的に選択するようにしましょう。
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